【地域創造学】五感の学びがここにある
住田町では25年以上前から行われているという「森の保育園」
町内の園児たちが1日種山の森で過ごし、自然と触れ合う中でたくさんの発見をし、全身で自然を楽しみます。自然の中で、子どもたちは、自分で考え、選び、森での経験を日常の中で生かしていきます、住田高校生は春と秋に、この森の保育園で、園児のサポーターとして活躍します。
5月は10日と24日に実施しました。
森の案内人 佐々木慶逸さんが今日の先生
住田の案内人事務局長佐々木さんは、本校の同窓生でもあります。自然観察指導員やプロジェクトワイルドエデュケーターなどたくさんの肩書を持っていらっしゃる「自然との共生」のプロです。
森の中の読み聞かせリハーサル
5月24日(金)本日のボランティアメンバーが会議室に集合し、今日のゴールをそれぞれ設定し、共有しました。全員に共通していたのが「安全に」というキーワードでした。
目標設定後、森の中で行われる「読み聞かせ」のリハーサルを実施しました。読み手以外は、園児役として園児になりきって行いました。
園児に自己紹介
住田高校生は、一人ひとり園児に自己紹介を行います。バスの中でも一度やったとのことでしたが、園児たちの反応は?名前の後に好きな食べ物クイズを行っていました。「わたしの好きな食べ物覚えているひと~」と呼びかけると、どんどん手が挙がります。(好き勝手に答えないんです。きちんと挙手して順番に答えます。4歳児おそるべし。)会話を通して、生徒と園児の距離が近づきます。
佐々木慶逸さんから、「森の注意事項」を教えていただきます
ヤマカガシはマムシやハブよりも毒性が強いから気を付けて!
近くに血清がないからドクターヘリをお願いしないといけない。よく特徴を覚えておいてね。
エゾハルゼミの大合唱
この日の種山は快晴。山道を登るにつれて虫の鳴き声が強くなってきました。生徒や園児は、「これカエル?セミ?なんの虫?」と口々に話しています。正体は「エゾハルゼミ」森全体がセミの鳴き声に包まれていました。
園児と手をつないで歩くと自然と会話が生まれます。
「僕のうちには獣道が3つもあってね・・・このシタウルシには触っちゃだめだよ・・・この黄色いテープの奥は入っちゃだめだよ。」「あ!カナヘビだ!あ!セミだ!」とにかく発見の繰り返しに驚きます。この感性を大切にしなければと思う瞬間でした。
体で覚えている学び
大人も子どもも全身の感覚を使って歩きます。視覚はもちろん嗅覚も触覚も普段より冴えて感じます。
遊びの延長線上にある「地域創造学」
住田町の小・中・高の滑らかな接続を目指す『地域創造学』は、ステージごとに学びが深化していきます。
住田町出身の生徒にとっては、住田の自然が学びの場。高校生が園児に猿山の岩の登り方と降り方のお手本を見せます。どこに手をかけて、どこに足をかけるかは体が覚えています。(住田で育った子は、何度もこの場所を訪れ、学齢ごとの学びを深めていきます。)
園児たちも挑戦します
園児の自主的一歩を待つ
自分の背丈の5倍以上ある猿山登りに挑戦する園児を住田高校生がサポートします。
初めての挑戦に果敢に挑む園児や恐怖で一歩踏み出せない園児など、子どもたちの反応はそれぞれです。
大人の私は、すぐに手や言葉をかけてしまいがち・・・でも、サポーターの高校生は「待つ」のです。待って、園児の反応を見て、次の支援をしています。生徒の無駄のないやさしい声掛けに感動しっぱなしでした。
もう一つ 感心したことがあります。
引率の先生方の姿です。この体験活動に向けて、先生方は現地を実際に歩きながら事前視察し、子どもたちの安全や学びの見通しをしっかりと持って今日の場に臨んでいるということ。子どもたちにどんな力を身につけさせたいかを共有しているからこその声がけや支援の姿がありました。
さて?今から何が出てくるかな?
猿山の岩に上った「逸さん」が園児たちに問いかけます。「これは何?」
「まつぼっくり~」みんな元気な声で答えます。
松ぼっくりは見たことがあっても、意外にマツのタネ(松の種子)を見たことがある人は少ないのではないでしょうか?
森の案内人の逸さんが、岩の上で松ぼっくり鈴のように振りました。すると鱗片から種が離れ、まるで羽虫のように飛んでいきまます。
風に乗ってどこまでも飛んでいく種子を見ていて、「たねのたび」という国語の教材を思い出していました。この森の保育園での経験が、学校での学びで生かされ、子たちの中に生きた教養として蓄えられていくことを想像するとなんだかワクワクしました。そして、成長した子どもたちがサポーターとして次の世代を育てる環境が、この住田にあることを誇りに思います。
住田高校の森の保育園のサポートはまだまだ続きます。
生徒たちの成長がますます楽しみになりました。